基礎練習は大切だけれど退屈なものだ
吹奏楽を指導した経験のある人は分かると思いますが、曲目の練習はもちろんですが、基礎練習を行うことが大切です。
基礎練習というと、専用の教材を用意して、パートやセクションに分かれ、みんなでメトロノームに合わせてユニゾンやハーモニー・アーティキュレーショ ンの練習をずっと繰り返すことが多いと思います。僕が中学、高校と吹奏楽部にいた頃も、朝練から全員で基礎合奏をやっていました。
でもこれ正直とても退屈なのです。みんなで4分音符=60のメトロノームを聴きながら、B-durの音階を8拍ずつ昇ったり降りたり繰り返す。確かに必要 な練習とはいえ、曲を吹いて音楽を楽しみたい子どもたちにとって見たら、間違いなく面白みに欠けます(僕は昔よく居眠りして怒られました)。休日の午後か ら基礎なんてやると、うとうと眠りだす子が……先生がしゃべってばっかりになっちゃうから、一方的でつまらないんですよね。
それで僕は、あることをやりました。
基礎練習をリレーする
あまり人数の多い場合はできませんが、基礎練の「リレー練習」をおすすめします。とくにパート練習でおすすめです。やり方は簡単です。一つの吹き方を、音が変わるたびに順番にリレーしていくだけです。
例えば、「B-durを、テンポ60、8分音符で8拍ずつ、スタッカートで吹く」という練習があるとします。一人目はB♭で8拍吹く、そしたら二人目はCで8拍吹く、3人目はDで……という具合に、次々につなげばいいだけです。
こうすると、みんな自分の番で前の人とつなげて音を吹かないといけなくなるので、集中するようになります。それだけでなく、周りと比べて自分の音のどこに 改善が必要なのかもすぐわかるので、効率よく練習することができます。たったこれだけで、最初の休憩中ぐったりしていた子たちが、次の休憩時間には、自分 ができなかった音を隣の子と楽しそうに練習するようになりました。ちょっとしたゲーム性を持たせるだけで、退屈な練習が劇的に変わります。
そういうわけで、先生方はその長い気で「お前らなんだ!やる気あんのか!」と生徒を叱咤してエネルギーを使う前に、ぜひリレー練習を試してもらいたいと思います。
先生の仕事は簡単です。「直した方がいいところを分かりやすく指摘してあげる」「失敗は一緒に笑って励ます」。大事なのは、自分でやる気にさせてあげること、これだけです。