作曲や編曲を学ぶ場合、特にオーケストラや吹奏楽の楽曲では、移調楽器の記譜を学ぶ必要が出てきます。楽器によっては、ドの音がCから始まらないからです。ピアノ譜しか読んだことがなかったりする場合、初めて学ぶ人は混乱する点の一つだと言えます。
例えばB♭管クラリネットの場合、記譜上のドが、B♭から始まります。ピアノ譜で「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」と書くと、実音では長2度低く「シ♭・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ♭」と演奏される、といった具合です。
かつて移調楽器の記譜は、ソルフェージュのレッスンや、実際に楽器の演奏経験を踏まえなければ体得が難しいものでした。しかし今の時代、書いた音が鳴ってくれるノーテーションソフトを上手く活用すれば、独習は十分可能です。
今や教育現場では、e-ラーニングが当たり前のように取り入れられる時代です。スコアライティングの学習に、パソコンを使わない手はありません。ノーテーションソフトを活用すれば、移調楽器の記譜を体得することは難しくありません。一度身体で覚えてしまえば、頭の中で書いたとおりに音が鳴るようにできます。紙と鉛筆だけでスコアを書いていくことも可能になるでしょう。
主な移調楽器
オーケストラや吹奏楽で用いられる楽器のうち、移調が必要な楽器には次のようなものが挙げられます。
| 調 | 記音(実音より) | |
| 木管楽器 | ||
| ピッコロ | in C | 1オクターブ高い |
| イングリッシュホルン | in F | 完全5度低い |
| Esクラリネット | in E♭ | 短3度高い |
| クラリネット | in B♭ | 長2度低い |
| in A | 短3度低い | |
| バスクラリネット | in B♭ | 1オクターブと長2度低い |
| アルトクラリネット | in E♭ | 長6度低い |
| ソプラノサクソフォン | in B♭ | 長2度低い |
| アルトサクソフォン | in E♭ | 長6度低い |
| テナーサクソフォン | in B♭ | 1オクターブと長2度低い |
| バリトンサクソフォン | in E♭ | 1オクターブと長6度低い |
| 金管楽器 | ||
| ホルン | in F | 完全5度低い |
| トランペット | in B♭ | 長2度低い |
| フリューゲルホルン | in B♭ | 長2度低い |
| 弦楽器 | ||
| コントラバス(オーケストラチューニング) | in C | 1オクターブ低い |
| 打楽器 | ||
| シロフォン | in C | 1オクターブ高い |
| グロッケンシュピール | in C | 2オクターブ高い |
| 鍵盤楽器 | ||
| チェレスタ | in C | 1オクターブ高い |
他にも多くの移調楽器があり、ここでは全てを取り上げられませんが、スコアを読む際や、オーケストレーションの際には必要になる知識となります。
ノーテーションソフトで移調楽器の記譜を体得する
移調楽器の記譜を体得するには、実際にその移調楽器で楽譜を書くことが最も近道でしょう。ノーテーションソフトを活用しましょう。
一般にノーテーションソフトは、数万円で販売されていますが、これらの中には簡易版をフリーでダウンロードできるものもあります。代表例が「Finale Notepad」です。
作編曲に取り組む人なら自分の曲を、取り組まない人は、自分がよく知っているメロディーやハーモニーを、移調楽器を使って書いてみるのがお勧めです。「かえるのうた」でも「ぞうさん」でも構いません。自分が慣れ親しんで、音符を書くことができる、身近で簡単な曲の方が良いでしょう。
初めのうちは、打ち込むと同時に鳴る音を頼りに、自分が欲しい音かを確かめながら進めましょう。さまざまな楽譜を繰り返し打ち込んで慣れるうちに、「ここに置くとこの音が鳴る」というのが予測できるようになります。
予測がつくようになったら、今度はノーテーション時の音を聞かずに楽譜を打ち込んでみましょう。ある程度打ち込んでから、プレイバックして答え合わせをします。違った場所は適宜修正を入れ、どのようにすれば正確な音が鳴るのかを学びましょう。